過食よりも飢餓状態の方が断然長かった我々人類。
太古の時代、生きるには血糖値を上昇させることを優先する必要がありました。過食することが無かった頃、わざわざ血糖値を下げるシステムはそんなに必要なかったはずです。
元々人類は食べ物に困っていた時代が長かったため、飽食の時代に合った体ではありません。
膵臓から分泌されるホルモン「インスリン」は血糖を下げる唯一のホルモンです。
「食べ放題」「飲み放題」「好きなものを好きなだけ」「炭水化物が主食」が当たり前となった現在、血糖値を下げられない人が増えました。
過食や偏食を原因とするⅡ型糖尿病が増加傾向です。昔は日本人40歳以上の「6人にひとりが糖尿病」と言われていましたが、現在「4人にひとり」とも言われております。
血糖値が高いまま下げることが出来ない状態が長く続くと何が待っているのか? これは知っておく必要があります。
過食・肥満・運動不足・ストレスなどが原因です。
ストレスを受ける → グルカゴン、アドレナリン、副腎皮質ホルモン分泌↑ → 血糖値上昇 → 緊張が続くと高血糖が続く → 糖尿病リスク上昇
Ⅰ型糖尿病:小児期~自己免疫疾患の1つ(インスリンが欠如)
Ⅱ型糖尿病:大人~インスリンの分泌が悪くなったり、体の細胞がインスリンに反応しなくなる→血糖値が高くなる。
血糖値を下げるインスリンの働きを覚えておきましょう。
血液が糖でドロドロになるとそれを薄めようと体の水分が血液中に入り、血液中の増えた水分が尿となり頻尿・多尿となります。従って、体の水分が奪われてしまうので口渇・多飲・肌の乾燥・のぼせ・ほてり感を生じます。最初は自覚症状はほとんどないのですが、慢性化すると顕著となります。このような体液不足のことを漢方では「陰虚」といいます。自動車に例えると冷却水不足のオーバーヒート状態です。
インスリンの働きが悪くなると、糖からエネルギーがとれなくなり脂肪・タンパク質の代謝に障害が起きます。そして、全身倦怠感・脱力感を生じます。これを漢方では元気不足の「気虚」といいます。
糖尿病が長く続くと高血糖で「砂糖漬け」になった血管は細い毛細血管からボロボロと壊れ、血行障害や神経障害を起こします。
手足のしびれ・痛み・感覚の異常・脳梗塞・狭心症など血行不良の「瘀血」が原因の症状が出てきます。最悪の場合、失明したり、腎障害で人工透析が必要になったり、足が壊死して切断が必要だったり、命を落とすことがありますので症状をなるべく悪化させないようにしましょう。
古代中国の伝統医学(中医学)の文献に糖尿病という記載はなく、似た病名では「消渇(しょうかち)証」となります。消渇証の「消」は痩せるということで「渇」は文字通り口渇のことです。糖尿病が進行する特徴であり、体液不足の「陰虚」と元気不足の「気虚」。これら両方合わせて「気陰両虚」といいます。そこに血行不良の「瘀血」を低減させることが必要です。
補気薬と滋陰薬、そして活血薬をその方の体質に合わせて処方を使います。三種類の処方が必要という意味ではなく、どこを優先的に改善するかがポイントです。症状が軽ければ1処方、症状が複雑ならば2~3処方を組み合わせます。
「 クレアチニンが高いと医者から言われたが、良い漢方薬はないか?」ご相談に来られたのは85歳の男性S様です。S様は、3カ月前に入院して心臓の手術を受けられそうです。その際に造影剤を使用して、それから急にクレアチニン値が高くなったとのことでした。
毎月検査をするとクレアチニン値が 1.2 → 1.5 →1.82 と段々高くなっていくので医師に相談しましたが治療や薬はないと言われ、漢方薬でなんとなならないかと当店にご来店されました。
クレアチニンは、腎機能を調べる血液検査。腎臓がどの程度機能しているかの1つの目安になるものです。血液中の老廃物のひとつで、通常は腎臓でろ過されてほとんどに尿中に排出されますが、腎機能が低下していると尿中に排泄されず血液中に蓄積されます。この血液中のクレアチニンを「血清クレアチニン値」」といいます。
基準値は男性0.5~1.1 ㎎/㎗ 以下、女性0.4~0.8㎎/㎗ 以下です。クレアチニン値が基準値より高いということは、腎臓に何らかのトラブルがある・腎機能が低下していると考えられます。
「腎臓=尿をつくる臓器」それだけではないのです。
などの働きをしていて『 血液のクリーニング装置』でもあるのです。
腎臓の機能はいったん落ちてしまうと回復することができません。
ですから、いかに腎臓への負担を軽くしてあげるかがクレアチニンの改善のポイントなのです。
検査結果を見せていただくとクレアチニンの他にも尿素窒素や尿酸の値も基準値より高くなっていました。ただ、タンパクと潜血反応はありませんでした。また、10年以上前から糖尿病も患っていてから血糖値や血圧を下げるお薬を服用されているとのことでした。
今回は造影剤使用後にクレアチニン値が悪化したようですが、もともと糖尿病があったことで腎臓に負担がかかっていたのは間違いありません。そのほかに、トイレに1日10回 以上、夜中も2~3回トイレに行く、体のだるさ・足のむくみ・軟便などの症状がありました。
腎臓は血液をキレイにしてくれる大切な臓器でいったん機能が落ちてしまうと回復は難しいこと、腎臓のメインは腎糸球体という毛細血管の塊で、1個の腎臓に200万個の血液ろ過装置があり血液が非常に豊富な臓器であること、腎臓の負担を軽くするためには、血液の質をよくしてあげることが1番必要なことなどをお話しました。
漢方薬は、血液の質を改善することで腎臓への負担を軽くしてあげる活血薬をメインに使い、体のだるさや軟便といった体に元気の足りない症状もでていたので、それを補う健脾薬と、もともと糖尿病もあり腎の働きが弱っているようでしたので、腎の働きを助けるために補腎薬と3種類の漢方薬をお渡ししました。お薬代は1か月分で2万円ちょっとでした。
毎日3回、食間に漢方薬を忘れずに服用すること、体を冷やさないこと、栄養のバランスを考えた食事を摂ること(特にタンパク質の取り過ぎに注意する)、体がだるくなくなれば散歩などの軽い運動を少しすること、しっかり睡眠をとること、水分の取り過ぎに注意して温かい飲み物 にすることなどをお話させていただきました。
そして、ちょうど1か月後… S様がご来店されました。ご様子をお聞きすると、漢方薬を服用して2週間後にクレアチニンの血液検査をしたら数値が1.6と下がっていたそうです。さらに2週間後の検査(漢方薬を服用して4週間後)では1.5とさらに下がっていたそうです。数か月の間、毎月上り続けていたクレアチニン値が 1か月で0.3以上下がったのでドクターも大変驚いたそうで、「何かしたの?」ドクターから聞かれたので「漢方薬を飲んだ」と お話されたそうです。
私自身も、クレアチニン値が下がるのに2~3カ月くらいかかるかなと思っていたので2週間で効果があらわれるとは驚きました(改めて漢方って凄いなぁと感じました)。漢方薬を気に入ってくださったS様。その後も1か月おきにご購入されて現在も服用しています。来月もクレアチニンの検査を受けられるそうですが、また数値が下がっているかなと嬉しそうにお話されていました。
S様のクレアチニン値は高めでしたが尿タンパク(-)血尿(-)でしたので 上記の漢方薬をおすすめしました。尿タンパクや血尿のある方は、同じくクレアチニン値が高い場合でも違う漢方薬をおすすめすることもありますし、昔ながらの煎じ薬をご希望の方には、煎じ薬を調合いたします。