アトピー性皮膚炎の方にとって、ステロイド剤の使用を止める・止めないの判断はとても大きな関心事だと思います。
ステロイド外用剤の副作用について広く知られるようになってきた現代では、ステロイドを止めたい・使いたくないと言う方が増えています。
たしかに、間違った使い方をすればどんな薬でも副作用が起きることはありえます。
でも、正しい使い方をすればアトピー性皮膚炎の『炎症を抑える』力が強いのは、やはりステロイド外用剤が1番だと言えます。
ステロイド外用剤を上手に使いこなすには、まず副作用について正しく知ることが何よりも大切です。
ステロイド外用薬の副作用
ステロイド外用剤(塗り薬)には大きく分けて5つの副作用があります。
・皮膚が薄くなる(皮膚が傷つきやすくなったり、裂けやすくなる)
・皮膚の毛細血管が弱くなる(毛細血管が拡張してほてりや赤みが出やすくなる)
・毛包皮脂腺の異常活性化(多毛、にきびが出来やすくなる)
・皮膚の免疫機能低下(細菌やウイルス、真菌に感染しやすくなる)
・まれに全身的副作用(副腎皮質機能の抑制など)
これらの副作用は、ステロイド外用剤が持つ本来の薬理作用が行きすぎた結果として出てくるものです。
ですから、ステロイド外用剤が強力であればあるほど副作用も出やすくなります。
副作用は基本的に塗り続けている最中に、塗り続けているところにでます
男女差・年齢・個人差があるので一概には言えませんが「数カ月から数年間、皮膚の同じ部分にステロイド外用剤を毎日塗り続けていると発生」してきます。
いったん副作用が出ると、ステロイド軟こうを中止してもしばらく続きます。
でも、ほとんどの副作用は使用を中止すれば3か月~6か月で治るとされています。
ただし、毛細血管拡張の副作用は、いったん出てしまうとかなり治りにくいです。
全身的副作用は、ステロイド内服剤(飲み薬)を服用した場合にみられるものです。
手足や顔に数回ぬっただけでは起こりません。
大人の場合、1日にチューブ2本(計10g)の「強い」ランクのステロイド外用剤を、毎日使用し続けても、3ヶ月間は副腎皮質機能の抑制は起こりません(何年もこのような塗り方を続けていれば話は別ですが・・・)
ステロイド外用剤は、対症療法としてはとても優れた薬です。
でも、完治させるための薬ではありません。
皮膚の炎症を抑え込む作用は強力ですし、かゆみを抑えてくれるので掻き壊して皮膚を傷めることは改善してくれます。
しかし、アトピー性皮膚炎そのものを治しているわけではありません。
ステロイド外用薬は使うべき時に使えばとても良い薬だと言うことだけは知っておいてくださいね。
リバウンド現象とは?
ステロイド外用剤の使用を急にやめたことで起こるリバウンド現象。
リバウンド現象はもともとあったアトピー性皮膚炎の症状が、ステロイド剤を塗ることでコントロールされていたのに、突然、使用を止めたり減量したために、もともとの症状が急激に悪化して出る症状のことをいいます。
それまでに出ていなかった部位にまで、皮膚炎が出てくることもあります。
では、実際にどんな症状がでるかご存知ですか?
ステロイド剤を中止して3日~1週間後に、今までアトピー性皮膚炎が出ていた所が真っ赤になりパンパンに膨れ上がってきて、熱をもち、滲出液(黄色い汁)が出始めます。
さらに1~2週間後には今まで症状の出たことのない部位にも皮膚炎が出始めて、徐々に腫れて熱を持ち、ジュクジュクと浸出液が出ます。
人によっては全身に症状が出ることもあります。
1カ月くらいの一定期間の後に皮膚が乾燥して剥け落ちたり、滲出液が落ち着いてきたりと少し改善されることもありますが、再び真っ赤に腫れあがり、また滲出液出て・・・と何度も繰り返すことが多いようです。
どれぐらいの強さのステロイドをどれくらいの期間使用していたかにもよりますが、3カ月ほどで落ち着くこともありますし、半年・1年~数年も激しいリバウンド症状が続く人もいます。
かゆみがひどくて夜も眠れず、掻きむしってしまい全身血だらけ・・・
顔から足まで全身から、滲出液が出て、衣類が肌に張り付く・・・
かゆくて掻くとまた滲出液が止まらなくなる・・・
少し落ち着いたかなと思うと、今度は皮膚が乾燥してガサガサに・・・
皮膚が突っ張って関節が思うように動かせない・・・
全身の炎症がひどければ熱も出ます。
昼も夜も1日中かゆみで眠れないし、身体がだるくてしょうがない・・・顔にも症状が出るので、学校や仕事にも行けません。
ここに書いた症状は実際に私が体験したものです。
症状がひどく、学校にも1カ月ほど行けませんでした。
幸い1カ月ほどでひどいリバウンド症状は治まりましたが、アトピー性皮膚炎が治ったわけはありませんでした。
その後3年間くらいは、ひどく出る→少しおさまるといった具合に悪い→少し良いの状態を繰り返していました。
現在、アトピー性皮膚炎でステロイドをお使いの方は、ご自分の判断で、急にステロイドを止めないでください。
大げさと思われるかもしれませんが、場合によっては命にかかわることもあるのです。
ステロイド剤は徐々に減量しよう
ステロイド剤を止めるにも止め方というものがあります。
副作用が怖いからと言って、絶対に自己判断で勝手に止めてはいけません。
脅すわけではありませんが、リバウンド経験者でもある私が言います。
リバウンド症状は想像以上に悲惨です。
では、どうやってステロイド剤を止めたらよいのでしょうか?
それにはまず、漢方薬、食生活の改善、生活習慣の改善を行って体を内側からケアしてアトピー体質そのものを改善して行くことが大切になります。
漢方薬は、ずっと同じ処方を使うわけではありません。
皮膚の症状によっていろいろな生薬を使い分けていきます。
ジュクジュクと浸出液が出ているような場合には、腫れを抑えて余分な水をさばく処方を使います。
熱をもって赤くカサカサと乾燥している場合には、炎症を抑えて潤いを与える処方を使います。
ある程度かゆみや炎症や治まってきたら、今度は丈夫な皮膚をつくりだす手助けをする処方を使います。
最終的には、漢方薬も飲まなくて肌の良い状態をキ―プすることが目標です。
ステロイド外用薬は、皮膚の症状・状態に合わせてランクを弱いものに変更したり、塗る回数や塗る間隔を少しずつ減らすようにします。
ステロイド外用薬を弱いものに替えることで皮膚の状態が悪化したら、また少し強いもの戻して様子を見る・・・という風に少しずつ減薬していくことが大切です。
その後は非ステロイドの塗り薬と保湿剤へ変えてスキンケアを必要に応じて行います。
早い方でも半年~1年、人によっては数年かかる場合もありますが無理なくステロイド剤を使わなくて良い状態にすることが出来るのです。
また、アトピー性皮膚炎では、食事にも注意が必要です。
炎症がひどく赤みや腫れがひどくジュクジュクしている場合は、野菜(葉っぱ類)中心の和食にします。
味の濃いもの、脂っぽいもの、お菓子類は炎症を悪化させるのでがまんしましょう。
逆に赤味が落ち着いて乾燥が目立つようになったら、良い皮膚をつくるために、鳥肉や豚肉などのたんぱく質もとるようにします。
そのほかにも、1口30回噛むようにする、刺激物は避けるなどアトピー性皮膚炎が早く治まるようにいろいろとアドバイスさせていただきます。
また、スキンケアも再発の予防や肌のバリア機能を高めるのでアトピー性皮膚炎の方には必要だと私は思っています。
ステロイド外用剤はあくまでも、炎症や痒みなどを抑えるため薬です。
スキンケアのためのものではないのです。
アトピー性皮膚炎は、完全に治すこと=アトピー体質をなかったことには残念ながら出来ません。
でも、かゆみもなくステロイド外用剤を使わずに、毎日を過ごせるようにコントロールしていくことは出来ます。
体を内側から改善し適切なスキンケアを行うことで自然にステロイド剤を止めることが出来るのです。
アトピー性皮膚炎は根気よく、食生活も生活習慣も含めて改善していく必要があります。
その先にはスベスベな綺麗な肌が待っています。
一緒に頑張りましょう。
【この記事を書いた人】
創業明治34年 漢方薬の西山薬局
四代目 薬剤師 西條ゆみこ
漢方薬局に生まれ幼少期から生薬に囲まれて過ごす
大学生と中学生2児の母親
更年期障害真っ只中で漢方処方を日々研究中