生理痛=月経痛は、ご相談の多い月経トラブルの1つ。生理だから仕方がない・・・と諦めている人も多いと思いますが、きちんと体質を整えることで和らげることもできます。
鎮痛剤に頼るだけでなく、日ごろの養生で体質を改善して、月経痛の起こりにくい身体づくりを目指しましょう。
「瘀血(おけつ)」が月経痛の要因
月経痛は、月経の直前や月経期に起こる下腹部痛や腰の痛みのこと。その症状は千差万別で、多少お腹の痛みや腰が重だるく感じたり、軽い痛みがある程度という人もいれば、日常生活の支障をきたすほど強い痛みが起こる場合もあります。
月経痛の主な原因は、子宮を収縮させて不要になった子宮内膜を排泄させるプロスタグランジンという物質。その分泌が過剰になると、子宮の収縮が強くなり痛みを誘発します。また、冷えやストレス、自律神経の失調などで血流が悪化すると、プロスタグランジンが骨盤内に停滞して、痛みを強く感じる要因となります。
一方、中医学でも月経痛の基本的な原因は「瘀血(おけつ)=血行不良」にあると考えます。そのため、月経痛の改善は、まず滞った「血」の巡りをスムーズに整えることが基本となります。また、「身体の冷え」「ストレスによる気の停滞」「体内の気血不足」など、瘀血を招く要因となっている不調も合わせて改善することが大切です。
月経痛は、『あるのが当たり前』と思われがちですが、中医学では『ない』または『あっても軽い痛み程度』が健康な状態と考えます。女性にとって。月経との付き合いは毎月のこと。つらい症状は積極的に改善して、ストレスのない健やかな月経を保つように心がけましょう。
月経痛の対処法
月経痛は、体内の不調が要因となって起こるもの。月経と上手に付き合うためにも、この機会にご自分の体質をしっかりと見直してみましょう。
基本のケア:瘀血を改善しよう
中医学では「不通則痛(滞ると痛みが起こる)」と言われ、月経痛も血の巡りが滞る「瘀血」が要因になって起こる症状と考えます。
そのため、月経痛を改善するためには、まず滞った血の巡りをスムーズに整えることが大切です。血流を良くすることは、月経痛だけでなく、身体全体の不調を改善する事にもつながります。
ストレスや運動不足、食生活の乱れなど、現代の生活はなにかと瘀血を招きやすいので、食事や生活習慣にしっかりと気を配り、血の巡りをスムーズに保つように心がけましょう。
気になる症状
月経痛が強い、月経初期に痛みが強い、頭痛、経血の色が暗く血塊がある、くすみ、目の下のクマ、唇が紫色、アザができやすい、手足のしびれ、子宮内膜症、子宮筋腫、卵巣嚢腫、静脈瘤など
食養生:温性・血行を良くする食材
らっきょう、玉ねぎ、ネギ、にんにく、シナモン、黒きくらげ、桃、黒酢、そば、イワシ、サンマなど
よく用いられる漢方薬
冠元顆粒、桂枝茯苓丸、血府逐瘀湯、田七人参など
プラスのケア
「瘀血」を根本から改善するためには、その要因となっている不調も合わせて改善することが大切です。気になる症状を参考にして体質をチェックし、身体に隠れている不調を取り除きましょう。
1.「冷え」体質を改善する
「血」は『冷えると凝固する』という性質があります。そのため、「外寒(冬の寒さ、クーラーなどによる冷え)」や「内寒(冷たい飲食、薄着などによる体内の冷え)」の影響で身体が冷えると、血の巡りが滞り「瘀血」を招いてしまうのです。
外寒と内寒が長く体内に停滞すると、月経痛の症状も強くなるので要注意。季節を問わず温かい飲食、入浴、冷えない服装などを心がけて『冷え体質』を根本から改善しましょう。
【気になる症状】
月経前・月経期に下腹部が冷えて痛い、経血がスッキリ出ない、経血の色が暗く血塊がある、温めると痛みが緩和する、身体の冷え、手足の冷えが強い、顔色が白いなど
【食養生】身体を温める食材
よもぎ、シナモン、ナツメグ、生姜、ネギ、フェンネル、山椒の実、八角、クローブなど
【よく用いられる漢方薬】
婦宝当帰膠、温経湯、芎帰調血飲第一加減、当帰四逆加呉茱萸生姜湯など
2.「気」の巡りを整える
「気」と「血」は体内を一緒に巡り、気の推動作用によって血流がスムーズに保たれています。ところが、過剰なストレスを受けると気の巡りが停滞してしまうため、血流も悪化して「瘀血」を招くことにもなります。その結果、月経痛などのトラブルが起こりやすくなるのです。
このタイプは、日ごろからイライラしがちで、ストレスを感じやすいことが特徴です。なるべくリラックスして過ごすよう心がけ、気の巡りをスムーズに保ちましょう。
【気になる症状】
月経前・月経期に下腹部が張って痛い、ストレスで月経痛が悪化する、胸やわき腹の張り・痛み、イライラしやすい、怒りっぽい、緊張しやすい、片頭痛、頭痛、肩こりなど
【食養生】香りが良く気の巡りを良くする食材
ジャスミン、ラベンダー、ミント、菊花、陳皮(みかんの皮)、春菊、そばなど
【よく用いられる漢方薬】
逍遥顆粒、加味逍遙散、開気丸、桂枝茯苓丸など
3.「気」「血」を養う
過度なダイエット、慢性疾患、過労、睡眠不足などで体力を消耗していると、体内の「気」「血」は慢性的に不足した状態になります。すると、血流をサポートする気のエネルギーが足りなくなり、また血管内の血も十分にないため、血の巡りをスムーズに保つことが出来なくなります。その結果、「瘀血」を招いて月経痛を引き起こしてしまうのです。
このタイプは食欲が落ちていることも多いので、まずはしっかり栄養を摂って、不足しがちな気・血を養うことを心がけましょう。また、生命エネルギーの源となる「腎」の働きを整えて、根本的な体力を養うことも大切です。
【気になる症状】
月経後半の腹痛が強い、しくしくとした痛みが長引く、腰痛を伴う、月経周期が長い、経血量が少ない、疲労、倦怠感、めまい、立ちくらみ、貧血、不眠、汗が多い、カゼを引きやすい、軟便、顔色が白っぽいなど
【食養生】温性で気・血を補う食材
大豆製品、レーズン、レバー、人参、クコの実、鶏肉、卵、豚肉、羊肉、黒糖、山芋、ほうれん草、落花生、ナツメなど
よく用いられる漢方薬
婦宝当帰膠、心脾顆粒、参茸補血丸、補中益気湯、十全大補湯、健脾散エキス顆粒、六君子湯、杞菊地黄丸、八味地黄丸など
★月経期の過ごし方のコツ★
・月経前はイライラしがちなので、意識してストレスをため込まないようにする
・月経中は身体が冷えやすいので、温かい飲食・服装を心がける
・月経中は気血を消耗するので、とにかく無理はしない
・月経中は血を消耗するので、目の使い過ぎに注意する
・月経後は気血をしっかり補う
月経痛の原因は「瘀血」ですが、根本から改善するには、その元となる不調の改善が欠かせません。自分の体質を知り瘀血の原因を取り除きましょう。
【この記事を書いた人】
創業明治34年 漢方薬の西山薬局
四代目 薬剤師 西條ゆみこ
漢方薬局に生まれ幼少期から生薬に囲まれて過ごす
大学生と中学生2児の母親
更年期障害真っ只中で漢方処方を日々研究中