PCO(多嚢胞性卵巣)、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)とは難治性不妊症のひとつです。
卵巣の状態をエコー(超音波診断装置)で見ます。この状態を「ネックレスサイン」といいます。
排卵前の2週間で卵胞は成熟しきれないので、主席卵胞(グラーフ細胞)ができず排卵が起きにくです。
月経周期も長くなり不順になったり無月経になったり。血液検査をすることで、ホルモンバランスの乱れが判明します。
通常は卵胞期初期ではFSHもLHも数値は一桁代でFSH>LHの関係です。
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の方は、LH>FSHの逆転現象が多くみられます。
他にも、高アンドロゲン血症やインスリン抵抗性がある場合など複雑な状態です。
高アンドロゲン血症とPCO(多嚢胞性卵巣)
女性の身体でもアンドロゲン(男性ホルモン)は存在し、つくられます。
まず、女性ホルモンを卵巣でつくる前に体脂肪・コレステロールなどからアンドロゲン(男性ホルモン)がつくられ、卵巣で女性ホルモンに作り替えられます。
このアンドロゲン(男性ホルモン)、卵胞の発育にも関与するほか、閉鎖卵胞(排卵前までに成熟卵胞と一緒に大きくなるが途中で縮小し吸収される卵胞)にも関与します。
排卵を迎える前の初期段階ではFSH(卵胞刺激ホルモン)の作用をアンドロゲン(男性ホルモン)が増強し、複数個もの小卵胞形成に関係してきます。
卵子の外側の顆粒膜細胞で、アンドロゲン(男性ホルモン)は女性ホルモン「エストロゲン」に変換されますが、ホルモンの変化がうまくいかない場合だってあります。
また、女性ホルモンが多くつくられることでアンドロゲン(男性ホルモン)も増えすぎてしまうこともあります。
アンドロゲン(男性ホルモン)が増えすぎることを高アンドロゲン血症といいますが、PCO(多嚢胞性卵巣)の方は女性ホルモン(エストロゲン)産生が低下します。
このために卵胞発育や子宮内膜増殖に必要なエストロゲンが不足し、卵胞の発育が遅かったり停止したり、子宮内膜が厚くならずに途中で維持できず不正出血(破綻出血)となったり。
いつまでも排卵が起きないと、卵巣の一番外側の白膜が厚くなり余計に排卵しにくくなります。
高アンドロゲン血症により、排卵障害、子宮内膜形成不全、白膜の肥厚と自然妊娠に不利な条件が揃います。
インスリン抵抗性とPCO(多嚢胞性卵巣)
膵臓から分泌され血糖値をコントロールする「インスリン」というホルモンは、糖尿病の世界だけで語られるものではありません。
まずはインスリンが効きにくいインスリン抵抗性についてサラッとお話を。
左図は食後の血糖値上昇に反応して瞬時にインスリン分泌が起きる正常な方のグラフです。
中央の図は、食後インスリン分泌が遅れたり低下している様子。
右図は糖尿病が進行してインスリン分泌不全になっているグラフです。
インスリンが効きにくく、血糖値が高いままですとやがては糖尿病ということですよね。
いつもの食事。
こんなことはありませんか?
・甘いものが好きでお菓子・ケーキ・アイスクリーム・チョコ・果物・菓子パンなどの間食は欠かさない
・ワンプレートの食事が多い(炭水化物メイン)
・毎朝パン食である
・お昼はファストフードやパスタ、パンなどで済ませる
・すぐイライラする
・お腹が空くと機嫌が悪い
・ジュースをよく飲む
・食事の時間が不規則だ
・家族に糖尿病の方がいる
・揚げ物が多い
・食事のスピードが速い
・食後眠くなる
・朝食を抜くことが多い
・胃腸が弱く便秘がち
・お酒をよく飲む
糖尿病予備軍のチェックリストですが、当てはまる項目はありましたか?
空腹時血糖値が比較的に高く、月経周期が長い、稀発月経・・・
もしかしたら、PCO(多嚢胞性卵巣)かもしれません。
何故、不妊症や排卵障害と関係してくるか
排卵障害、エストロゲン不足、子宮内膜形成不全、白膜の肥厚。
・いつ排卵するか分らないのでタイミングをとれない
・卵胞が育たないのでAIHできない
・子宮内膜が厚くならないので着床しない(流産しやすい)
・エストロゲン不足なので頸管粘液(オリモノ)が少ない
・白膜が厚いので成熟卵胞まで育たない(狭い空間に閉じ込められる)
・稀発月経ばかり繰り返すので子宮内膜が硬くなっている
これらの原因となるアンドロゲン(男性ホルモン)が高い、高アンドロゲン血症の多くはインスリン抵抗性の結果として生じます。
PCO(多嚢胞性卵巣)の原因にもなりうるし、PCO(多嚢胞性卵巣)になった結果、高アンドロゲン血症にもなります。
アンドロゲン(男性ホルモン)の高値の状態が続くとLH(黄体形成ホルモン)も常に高値となることがPCO(多嚢胞性卵巣)の原因になるという説もあります。
家系的に糖尿体質の方がいらっしゃると、PCO(多嚢胞性卵巣)になりやすいという統計もあります。
PCOS多嚢胞性卵巣症候群の診断基準
日本産婦人科学会生殖・内分泌委員会は多嚢胞性卵巣症候群の診断基準を定め
1.月経異常の症状
2.卵巣に多数の小さな卵胞が確認される
3.血液中の男性ホルモンまたは黄体化ホルモンの値が高い
この3条件を満たす状態としました。
病院での治療
排卵の頻度にもよりますが、定期的に黄体ホルモンや経口避妊薬(ピル)を服用して人工的に子宮内膜を厚くして出血を起こし(厳密には生理とはいいません)子宮内膜を剥がすという「薬物療法」が行われます。
高インスリン血症にはメトフォルミン、時には漢方薬が処方されることもあります。
妊娠を希望する方には
まず、ファーストステップとしてクロミッド(クロミフェン)を使います。
ある一定期間、服用してもなかなか排卵が見られない場合は、レーザーや電気メスで内視鏡を使った手術を行う場合もあります。
卵巣を覆う白膜が厚く、排卵しづらい方に有効な治療法といわれております。
その次のステップアップとして、体外受精といった具合です。
PCO(多嚢胞性卵巣)といっても、個人差があり症状も様々です。
軽度のPCO(多嚢胞性卵巣)であれば、タイミング法でも妊娠も可能ですし、漢方薬や鍼灸治療だけでも妊娠~出産される方もいらっしゃいます。
食事の面で注意すべき点
・糖質オフ
・低GI値食
・ゆっくり食べる
この3点です。
オイリー肌・お父さんの臭い・髪のベタつきとPCO(多嚢胞性卵巣)
毎日、子宝に恵まれずに漢方薬や鍼灸治療を求めて、ボクのところへ大勢の方がご来店されます。
特に、お客様とすれ違った時、針灸治療で頭部にボクの顔が近づく瞬間、判ることがあります。
「この人、お父さんの臭いするな」って。
すなわち、アンドロゲン(男性ホルモン)が比較的多いということです。
アンドロゲン(男性ホルモン)は、皮脂分泌を盛んにする。
肌は油ギッシュ(オイリー)、髪はベタついてふんわりしていない。
カルテにはPCOにチェックが付いている。
不妊症に特化した鍼灸治療で15年になります。
「体臭が変わると、次の周期で妊娠」こんなことが続くようになりました。
「あれ?この方、今日はお父さんの臭い(加齢臭)がしないな~!!」
「そういえば、今日は髪の毛サラサラですね」って。
特に針灸治療時は、うつ伏せの時に使い捨てフェイスシートを使いますが、油とり紙のように施術の後はギラギラしていた。
半年も治療が続くと、使った形跡も無い位にサラッとしている時がある。
体質改善できれば高アンドロゲン血症も改善されて妊娠しやすいカラダになるということですね。
「オイリー肌・お父さんの臭い・髪のベタつき」
月経周期が長い、経血量が少ない、基礎体温がほぼ平坦・・・心当たりある人は最寄の産婦人科で一度「ブライダルチェック(血液検査含む)」を受けてください。
可愛い赤ちゃんをアナタに。
【この記事を書いた人】
創業明治34年 漢方薬の西山薬局
代表取締役社長 西條信義(梅安先生)
不妊カウンセラー、国際中医専門員、鍼灸師
漢方薬と鍼灸の二刀流でケアしております
趣味はバイクツーリング、焚き火、珈琲