年齢と供に失われる髪のハリやコシ、ストレスによる脱毛など見た目の印象にも影響する髪の悩みは男女を問わず多くの人が抱えているものです。
体内の「気」「腎」「肝」から整える中医学の美髪ケア。
年齢と上手に付き合いながら、いつまでも艶とボリュームのある元気な髪を保ちましょう。
髪は「血の余り」「腎の華」
抜け毛が気になる、髪が細くなる、白髪が増えてきた・・・中医学では、こうした髪のトラブルは心身の不調によって現れると考えます。
髪と特に深い関りがあるのは「血」「腎」「肝」の3つ。
中医学では『髪は血の余り』とされていて、血が十分にあれば髪にもしっかりと栄養が届いて健康な状態が保たれると考えます。
そのため、体内の血液が不足したり、血流が悪くなっていたりすると髪に栄養が行き渡らず抜け毛や白髪が現れるのです。
また『髪は腎の華』とも言われていて、生殖や成長に関わる腎の機能が弱くなると老化症状による抜け毛や白髪が現れやすくなります。
もう1つ、現代社会ではストレスによる髪のトラブルも多くみられます。
ストレスは「気」のめぐりをスムーズに保つ五臓の「肝」の働きを低下させてしまいます。
すると、気と一緒に体内をめぐる血の流れも悪くなり髪の栄養が不足してトラブルが現れやすくなります。
髪のことで思い悩むと、それがストレスになって症状がさらに悪化してしまうことも少なくありません。
大切なのは、あまり深刻に考えすぎないこと。
加齢による髪質の低下も、身体の中からしっかりケアをすれば和らげることが出来ます。
年齢や遺伝の問題とあきらめずに、体質を整えるケアを積極的に行うことで美しく元気な髪を育てましょう。
タイプ別 髪の養生法
「血」不足タイプ
●主な症状
薄毛、抜け毛、白髪、細くて張りがない、乾燥してツヤがない、切れ毛、疲労感、息切れ、食欲不振、動悸、不眠など
「血」は全身を巡って、栄養や潤いを体のすみずみに届けています。
そのため、血が十分にあれば、髪にも栄養や潤いが行き渡り艶のある元気な髪が生まれるのです。
ところが、貧血や病後の体力消耗などが原因で体内の血が不足していると髪に栄養が行き渡らず、抜け毛や薄毛、白髪、髪のパサつきなどが現れるようになります。
月経や出産を経験する女性は、特に血を消耗しやすい体質といえます。
たとえ貧血でなくても、意識して血を養うように心がけ、血不足を予防しましょう。
養生の基本は、脾胃を元気にして食事をしっかりとり、血を補うこと。
睡眠を十分に摂る、適度な運動をするなど、生活習慣を整えることも大切です。
●血を補う食材
干しブドウ、なつめ、鶏肉、卵、ほうれん草、人参など
●漢方薬
婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)、参茸補血丸(さんじょうほけつがん)、心脾顆粒(しんぴかりゅう)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)など
腎の虚弱タイプ
●主な症状
慢性的な白髪、薄毛、抜け毛、腰痛、膝痛、めまい、耳鳴り、物忘れなど
「腎」は生命の源とも言われ、生殖・成長・ホルモン分泌などをコントロールする大切な臓器です。腎が強く健やかな状態であれば、老化や更年期による不調も現れにくく髪も元気な状態が保たれます。
反対に、加齢や慢性病などで腎が弱くなると、更年期や老化の不調が強く出るようになります。白髪や薄毛も現れやすくなり、更年期症状による心の不調からさらに抜け毛などを悪化させてしまうこともあります。
また、遺伝的要素で薄毛や白髪になりやすい人も、腎が弱い体質といえるので積極的に養生することをおすすめします。
加齢による衰えは、誰にでも現れる自然なこと。
それを止めることは出来ませんが、腎の養生で年齢による髪の悩みを和らげることはできます。いつまでも、ハリ、コシのある美しい髪を守るためにも、腎を元気に保つように心がけましょう。
●腎を補う食材
くるみ、黒ゴマ、黒豆、松の実、山芋、なまこ、桑の実など
●漢方薬
杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)、二至丸(にしがん)、八味地黄丸(はちみじおうがん)、六味丸(ろくみがん)、還精(かんせい)、海馬補腎丸(かいまほじんがん)など
ストレスタイプ
●主な症状
抜け毛、白髪、薄毛、円形脱毛症、憂うつ、イライラ、怒りっぽい、頭痛、喉が詰まる感じがする、お腹が張る、胸が張る、生理不順、生理痛など
「肝」は体内を巡る「気」の流れをスムーズに保つ役割を担っています。ところが、過剰なストレスを受けると肝の働きが低下して、気の流れも滞ってしまいます。
気は「血」と一緒に全身を巡っているため、気の逃れが悪くなると血流の悪化にもつながります。すると髪に栄養が行き渡らずに、抜け毛や白髪が増えてしまうのです。
日ごろからイライラしやすい、仕事が多忙、落ち込みやすいといった人はストレスを上手に発散して肝を健やかに保ち、血行を良くするように心がけましょう。
他にも、睡眠を十分にとる、こまめに体を動かすなど生活習慣の気配りも大切です。
また、抜け毛や白髪、円形脱毛症が目立つようになると、それが新たなストレスになって症状がさらに悪化する・・・という悪循環に陥ってしまうこともあります。あまり深刻に思い悩まず、気持ちをリラックスさせるよう心掛けて下さい。
●ストレスを発散させる食材
セロリ、三つ葉、セリ、グレープフルーツ、オレンジ、みかん、レモン、あさり、しじみ、レバー、ジャスミン茶、ミント茶、菊の花茶など
●漢方薬
逍遥散(しょうようさん)、加味逍遥散(かみしょうようさん)、冠元顆粒(かんげんかりゅう)など
髪を元気にするワンポイント
・朝と入浴前にはブラッシングをして、頭皮もマッサージする。
・質の良い睡眠をたっぷりとる
・夜は気持ちをリラックスさせる
・椿油やオリーブオイルなど、髪にやさしく安心な髪油を使う
・カラーリングやパーマなどは控えめに
・過度なダイエットは禁物。バランスの良い食生活を
・油っこいもの、辛いもの、冷たい物は控えめにする
ご自分の症状と体質を見極めて、身体の内側から髪をケアしましょうね。
【この記事を書いた人】
創業明治34年 漢方薬の西山薬局
四代目 薬剤師 西條ゆみこ
漢方薬局に生まれ幼少期から生薬に囲まれて過ごす
大学生と中学生2児の母親
更年期障害真っ只中で漢方処方を日々研究中