朝夕とひんやりとた風が吹くようになりました。
10月も終わろうとしておりますが、これからの時期は咳やのどの痛みといった不調に悩まされることも多くなります。
「のど」が弱い状態のままでは、風邪をひきやすくなってしまうので要注意です。
油断ぜず、日ごろのケアを大切にしましょう。
「のど」トラブルは原因は?
のどの腫れや痛み、咳といった不調は『風邪が原因』と考えがちですが、身体全体のバランスを考える中医学では、体内の不調にもその要因があると考えます。
のどは呼吸を行い、食べ物や水分を飲み込む器官です。そのため五臓の「肺」「脾胃」と特に深い関係があり、これらの機能が低下するとのどに影響して不調が起こりやすくなるのです。
例えば、自然界の邪気(風・熱などの邪気)が体内に侵入して肺に熱がこもると、急な咳やのどの腫れ、痛みなどの原因になります。肺の「気(エネルギー)」が不足している人は、咳が出やすい・風邪をひきやすいなど不調を繰り返してしまうこともあります。
また、暴飲暴食などで脾胃(胃腸)の機能が低下すると、身体に湿(余分な水分や汚れ)や熱が溜まり、のどの腫れや膿、炎症などを引き起こすこともあります。
その他にも、のどは「腎」の潤いを受けていると考えるため、腎の働きが低下すると乾燥やかゆみなどの不調につながることもあります。
このように、のどの痛みや咳などの症状には、さまざまな原因があります。これからの季節、のどから侵入しやすい風邪やウイルスを予防するためにも、自分の症状や体質に合った『のどケア』を心がけましょう。
タイプ別「のど」のトラブルケア
【風熱タイプ】急な咳・のどの痛み
急な咳やのどの痛み、腫れを引き起こすのは、風熱の邪気によるものです。
風邪の症状を引き起こす「風」の邪気が「熱」「寒」「燥」などの邪気と一緒に侵入すことで起こると中医学では考えます。
頭痛や発熱を伴う症状を感じたら、早めの対策で長引かせないことが大切です。
邪気を追い払いながら身体の熱を冷まし、のどの炎症を鎮めましょう。
【症状】
のどの痛み・赤味・腫れ、急な咳、声のかすれ、黄色く粘り気のある痰、発熱、悪寒、頭痛など
【食養生】熱を冷まして腫れを取り除く食材
梨、羅漢果、ミント、菊花茶など
【よく用いられる漢方薬】
銀翹解毒散、羚翹解毒丸、桔梗湯、桔梗石膏、五味消毒飲加減方、板藍根など
【肺気虚タイプ】肺のエネルギー不足
「肺」はのどの状態と密接に関わっています。そのため、肺の「気(エネルギー)」が不足していると、普段から咳が出やすい、のどが痛いといった不調が起こりやすく、免疫力が低下して風邪もひきやすくなってしまうのです。
このタイプは「脾胃」が弱く、栄養不足で気をうに出せないことも多いため、まず脾胃を元気にして食事をしっかり摂ることが大切です。体内の気を十分に養いながら、肺の働きを高めましょう。
【症状】のどの不調を繰り返しやすい
風邪をひきやすい、息切れ、疲労感など
【食養生】気を養い肺を健やかにする食材
大豆製品、白きくらげ、大根、ゆり根、山芋、白ごま、米、わかめ、しめじ、かぼちゃなど
【よく用いられる漢方薬】
麦味参顆粒、衛益顆粒、補中益気湯、人参養栄湯など
【陰虚タイプ】肺・腎の潤い不足
中医学では「のどは腎の潤いを受けている」と考えます。これは、のどの状態と深く関わる「肺」が「腎」と親密に関係しているためです。腎は体内の水分をコントロールする働きを担っていますが、この機能が低下すると肺の潤いも不足し、のどの乾燥や痛みが起こるのです。
このタイプの人は、潤い不足で身体の熱を冷ますことができず、熱がこもりやすいことも特徴です。体内の潤いを十分に養いながら、余分な熱を冷ますように心がけましょう。
【症状】
のどの乾燥・痛み・かゆみ、のどが弱い、午後になると痛みが強くなる、空咳、痰が少ない、声が枯れる、口が渇く、熱っぽい、手足のほてり、のぼせ、寝汗など
【食養生】身体の潤いを養い熱を冷ます食材
干し柿、柿、トマト、はちみつ、梅、レモン、氷砂糖など
【よく用いられる漢方薬】
麦味参顆粒、八仙丸、瀉火補腎丸、、麦門冬湯、百合など
【湿熱タイプ】食べ過ぎ・飲みすぎ
暴飲暴食、過度の飲酒などが原因で「脾胃(胃腸)」の働きが低下すると、体内に「湿(余分な水分や汚れ)」や「熱」がたまりやすくなります。この湿・熱がのどに影響すると、腫れや痛みを引き起こす原因になります。
また、このタイプはのどの奥に白い膿が溜まることも特徴です。口を開けるとのどの奥の方に白い膿の塊が見えるので、気になる人はチェックしてみましょう。
養生の基本は、溜まった湿と熱を取り除き、胃腸の働きを良くすること。食べ過ぎ・飲みすぎには十分注意して食生活を整えることが大切です。
【症状】
のどの腫れ、白い膿が溜まる、痰が多い、頭や体が重い、むくみやすい、食欲不振、軟便、口の粘りなど
【食養生】水分代謝を促し胃腸の働きを良くする食材
シソ、春雨、緑豆、レンコン、もやし、冬瓜など
【よく用いられる漢方薬】
温胆湯、勝湿顆粒など
のどを守る暮らしの養生
・毎日のうがいを習慣にしましょう。板藍根、桔梗湯を用いてのうがいもおすすめ
・お酒、たばこ、辛いものなどのどの刺激となるものは控えめに
・ナッツ類やおせんべいなどの固い食べ物は、のどを傷つけやすいので要注意
・加湿器などを利用して空気の乾燥を予防しましょう
・歌やおしゃべりは適度にし、のどの負担を少なくしましょう
のどの不調を起こしやすい人は、その原因をきちんと見極めて対処することが大切です。根本的な原因を改善することで、健やかなのどを保ちましょう。
【この記事を書いた人】
創業明治34年 漢方薬の西山薬局
四代目 薬剤師 西條ゆみこ
漢方薬局に生まれ幼少期から生薬に囲まれて過ごす
大学生と中学生2児の母親
更年期障害真っ只中で漢方処方を日々研究中