多くの人を悩ませる「肩こり・肩の痛み」
湿布やマッサージではなかなか改善できず、もうあきらめている人も多いですよね。
肩の不調は病気ではありませんが、コリや痛みが続くのはつらいものです。
体質を見直して、身体の内側からスッキリ肩こりを改善してみませんか?
肩こりの原因は『瘀血(おけつ)』
「肩こり」は、首や肩の筋肉が緊張してこわばり、不快感や痛みを感じる状態のことを言います。
筋肉は本来伸び縮みする性質がありますが、長時間のデスクワークやスマートフォンの使用、ストレスによる緊張、身体の冷えなどが続くと、その弾力が失われて縮んだまま硬くなってしまいます。
筋肉が硬くなると、今度は血管が圧迫されて血流が悪くなります。
すると、老廃物や疲労物質が停滞して筋肉中に溜まり、また血液によって運ばれる酸素や老廃物が筋肉に行き届かず、肩のこりや痛みを感じるようになるのです。
中医学でも、肩のこりや痛みを引き起こす主な原因は「瘀血(おけつ)=血行不良」と考えます。
また、「痰湿(余分な水分や汚れ)」の停滞、ストレスによる「気(エネルギー)」のめぐりの悪化、身体の「冷え」なども瘀血を招いて肩こりを引き起こす要因になります。
肩こりは放っておくと痛みやこりでまた筋肉が緊張して、血管が収縮する・・・という悪循環に陥ってしまうこともケースも多くみられます。
また、何らかの病気のサインとして肩こりが現れている可能性もあります。
たかが肩こりと軽視せず積極的に対策して不調を改善していきましょう。
タイプ別「肩こり・肩の痛み」対策
「瘀血(血行不良)」タイプ:痛みが強い
「血」は、身体のすみずみに栄養や潤いを届けています。また、体内の老廃物を運ぶのも血の役割です。
そのため、血がスムーズに巡っていれば肩の筋肉にも十分な栄養や潤いが行き届き、肩は健やかな状態になります。
反対に、血行が悪くなると筋肉の栄養や潤いが不足しがちになり、老廃物や疲労物質も溜まって、肩こりや痛みが起こりやすくなるのです。
瘀血の原因はさまざまですが、高齢者、運動不足の人、慢性疾患がある人などは根本的に瘀血を招きやすいので気をつけましょう。食生活に気を配り、質の良い血を保ってしっかり瘀血を改善しましょう。
【主な症状】
肩の痛み、肩こり、頭痛、関節痛、冷え、手足のしびれ、静脈瘤、子宮筋腫、月経不順、子宮内膜症、生理痛、月経血に血塊がある、シミが多いなど
【食養生】血の流れを助ける食材
紅花、サフラン、シナモン、よもぎ、玉ねぎ、黒きくらげ、黒豆など
【よく用いられる漢方薬】
冠元顆粒、桂枝茯苓丸、血府逐瘀湯、疎経活血湯、田七人参など
「痰湿」タイプ :胃腸が弱い
暴飲暴食、脂っこい食事、甘い物のとり過ぎなどで「脾胃(胃腸)」の働きが弱くなると、水分代謝が低下して、体内に「痰湿(余分な水分や汚れ)」が溜まりやすくなります。すると、「血」がドロドロになって「瘀血(血行不良)」を招き、肩のこりや痛みを引き起こします。
このタイプは、肥満体質の人、脂質代謝異常の人などに多く見られ、肩こりが慢性化しやすいことが特徴です。養生の基本は、食生活を改善して胃腸の働きを整え、水分代謝の良い状態を保つこと。また、利水作用のある食材を積極的に摂り、体内に溜まった痰湿をスッキリ取り除くことも大切です。
【主な症状】
肩こり・肩の痛みの慢性化、湿気の多い日に症状が重くなる、肥満気味、疲労倦怠感、むくみ、食欲不振、眠気がとれない、口の中が粘つくなど
【食養生】胃腸を整え、痰湿を取り除く食材
ハト麦、うど、へちま、海藻類、きのこ、緑豆、春雨、根菜類、ウーロン茶など
【よく用いられる漢方薬】
健胃顆粒、二朮湯、防己黄耆湯、六君子湯など
「気滞」タイプ:ストレス過多
「気(エネルギー)」は「血」と一緒に体内をめぐり、血の流れをサポートしています。そのため、気のめぐりが停滞すると血のめぐりも悪くなり、肩のこりや痛みが起こるようになります。
気のめぐりと関りが深いのは、五臓の「肝」です。肝はストレスを発散させて、気のめぐりをコントロールする臓器です。そのため、過剰なストレスを受けて肝の機能が低下すると、気の停滞を招いてしまうのです。
日ごろからストレスを感じやすい人は、筋肉も緊張しやすく、肩こりが悪化しがちなので気をつけましょう。こまめなストレス発散とリラックスを心がけて気・血のめぐりをスムーズに保ちましょう。
【主な症状】
肩こり・肩の痛みの長期化、情緒の変動で症状が変わる、目の疲れ、ストレスが多い、生理前の肩こりが強い、生理不順など
【食養生】香りでストレスを発散させ肝を整える食材
枸杞の実、菊の花、ジャスミン、ミント、ナツメ、トマト、そばなど
【よく用いられる漢方薬】
冠元顆粒、加味逍遙散、逍遥顆粒など
「冷え」タイプ:急性期に多い
冬の寒さや冷房などで身体が冷えると、筋肉がこわばり、血行が悪くなって、肩のこりや痛みが起こりやすくなります。こうした冷えによる肩こりは、急性期に多い症状です。早めの対策が悪化や慢性化の予防につながるため『冷えて肩がこるな』と感じたら、すぐに身体を温めて冷えを発散させましょう。
また、体内の「気(エネルギー)」や「血」が不足していると、冷えのダメージを受けやすいので気をつけましょう。疲れが溜まっている人、虚弱体質の人、更年期や高齢の人などは、特に意識して身体を冷えから守ることが大切です。
【主な症状】
突然起こる肩のこり・肩の痛み、首の痛み、頭痛、悪寒、冷え、疲労倦怠感など
【食養生】冷えを発散させて身体を温める食材
葛粉、シナモン、ねぎ、生姜、山椒の実、フェンネル、八角、紅茶など
【よく用いられる漢方薬】
葛根湯、婦宝当帰膠、衛益顆粒など
実践~暮らしの養生
・入浴で肩や首を温めると、筋肉がほぐれ血行が良くなります。
・長時間のスマホやパソコンは肩こり大敵。目の酷使に気をつけましょう。
・毎日、首・肩・腕を回して動かしましょう(肩甲骨を動かすように意識すると良いです)。
・緊張状態が続くと血行が悪くなるので、リラックスを心がけましょう。
肩のこりや痛みはつい我慢しがちですが、症状が悪化すると頭痛やめまいなどに悩まされることもあります。つらい肩こりをスッキリ改善するためにも、積極的な体質改善を心がけましょう。
【この記事を書いた人】
創業明治34年 漢方薬の西山薬局
四代目 薬剤師 西條ゆみこ
漢方薬局に生まれ幼少期から生薬に囲まれて過ごす
大学生と中学生2児の母親
更年期障害真っ只中で漢方処方を日々研究中