老眼と言えば、加齢とともに起こる症状と思われがちですが、最近ではスマートフォンの普及などで年代を問わず老眼のような症状を訴える方が増えてきています。
日常生活にも影響する目のトラブルは煩わしいものですよね。積極的に予防・改善して、スマホと上手に付き合っていきましょう。
スマホの使い過ぎは目に大きな負担が!
一般的な老眼とは、加齢によって目の筋肉や水晶体が衰えて、近くのものにピントが合いにくくなる状態のこと。
「遠ざけないと手元の文字が見えにくい」「近くにピントを合わせるのに時間がかかる」「夕方、薄暗くなると見えにくい」といった症状が現れます。
一方、現代病の一つとされる「スマホ老眼」は、スマートフォンなどの小さい文字を近くで見続けることで、目の筋肉が凝り固まってしまうことが主な原因になります。その結果、ピントの調節がスムーズに出来なくなり老眼と同じような症状が現れます。
中医学では、こうした目の不調は、まず五臓の「肝」を養うことを基本に予防・改善していきます。肝は「血」を貯蔵して、全身を巡る血量をコントロールする臓器。
そのため、血が十分にあって肝が元気に働いていれば、目にも必要な血が供給されて健やかな状態が保たれるのです。
ところが、スマホの使い過ぎなどで目を酷使すると、血を消耗して肝の機能が低下してしまいます。その結果、目に十分な血が行き届かず、栄養や潤いが不足して不調が起こりやすくなるのです。また、過剰なストレスによる肝の機能低下、慢性的な気・血不足なども、目のトラブルを引き起こす要因となるので注意しましょう。
スマホ老眼の症状は、病気ではありませんが「ちょっと見えにくい・・・」といった目の不調は、やっぱり不便だし気になりますよね。放っておくと症状が悪化しやすく、日常のストレスにもつながるので、気になる方は早めの対策を心がけましょう。
【タイプ別対処法】
●目の疲れ・乾燥が気になる「肝腎虚弱タイプ」
中医学では「肝は目に開く」と言われ、五臓の「肝」と目の状態は深く関係していると考えています。肝は、全身に栄養や潤いを与える「血」を貯蔵し、血量をコントロールする臓器。
そのため、肝にしっかり血が蓄えられていれば目にも栄養や潤いが十分に行き届いて良い状態が保たれます。
ところがスマホなどを長時間使い続けていると、目を酷使して体内の血を消耗し、肝の血不足を招くことになります。
その結果、肝の機能が低下して目に十分な血が送られず、栄養や潤い不足から不調が起こりやすくなるのです。
また「肝腎同源」といった、肝と腎は密接に関係する臓器で、「腎」の蓄える「精(生命エネルギー)」も目のエネルギー源になります。目のトラブルを改善するためには、肝と腎を一緒に養うことが大切です。
【肝腎虚弱タイプ・気になる症状】
目の疲労・乾燥、視野がぼやける、近くにピントが合いにくい、症状が長期化している
めまい、耳鳴り、集中力不足、物忘れ、脱毛、若白髪、腰痛、月経不順など
【肝腎虚弱タイプ・食養生】
肝・腎を補い目の状態を良くする食材
ゴマ、くるみ、クコの実、松の実、桑の実、山芋、レバー、なまこなど
【肝腎虚弱タイプ・漢方薬】
杞菊地黄丸、牛車腎気丸など
●目の充血や痛みがある「肝鬱気滞タイプ」
五臓の「肝」は、体内の「気(エネルギー)」をスムーズに巡らせる働きを担っています。
また、肝の経絡(目には見えない気の通り道)は目につながっています。
そのため、肝が元気に働いていれば、気のエネルギーが目にしっかり行き届いて、気と一緒に流れる「血」の巡りも良くなって、目の状態は健やかに保たれるのです。
ところが、イライラや憂うつ、過剰なストレスといった精神トラブルを抱えていると、肝の機能が低下して気の巡りが滞りがちになります。その結果、気や血がスムーズに巡らなくなり、目の不調も起こりやすくなるのです。
このタイプは、精神状態が悪くなると目の症状も悪化しやすくなるので気をつけましょう。ストレスを上手に発散して気持ちにゆとりを持ち、肝の働きを整えるよう心がけましょう。
【肝鬱気滞タイプ・気になる症状】
ストレスで症状が強くなる、目の痛み、目の充血、まぶたがピクピクする
頭痛、肩こり、イライラ、不安感、焦燥感、月経痛など
【肝鬱気滞タイプ・食養生】
ストレスを発散させて肝を健やかにする食材
菊花茶、ジャスミン茶、緑茶、ミント、あわび、サザエ、あさり、牡蠣、レモン、酢など
【肝鬱気滞タイプ・漢方薬】
逍遥顆粒、加味逍遙散、瀉火利湿顆粒、竜胆瀉肝湯など
●慢性的な目の疲労感「気血不足タイプ」
中医学では、体内を巡る「気」は目のエネルギー源になり、「血」は目に栄養や潤いを与えると考えます。そのため、体内に気・血が充実していれば、目はよく見える健やかな状態を維持できるのです。
ところが、過剰なダイエット、食事の不摂生、胃腸虚弱などが続いていると十分に栄養を摂ることが出来ず、気・血が不足した状態になります。
その結果、目の状態にも影響して視力の低下や目の疲れや乾燥といった不調が起こりやすくなるのです。
月経のある女性は、特に血不足を招きやすいので要注意。胃腸を整えてしっかり栄養を補い、睡眠を十分に取って、不足しがちな気・血を補うように心がけましょう。
【気血不足タイプ・気になる症状】
視力の低下、目の乾燥、疲れると症状が強くなる
疲労感、倦怠感、めまい、食欲不振、少食、軟便、脱毛、若白髪、月経量が少ないなど
【気血不足タイプ・食養生】
気・血を補い目に栄養を与える食材
クコの実、ブルーベリー、ぶどう、干しブドウ、なつめ、レバー、人参、ほうれん草など
【気血不足タイプ・漢方薬】
婦宝当帰膠、心脾顆粒、衛益顆粒、補中益気湯、補中丸、健脾散エキス顆粒など
~目に良い暮らしの養生~
・スマホの使用時間をなるべく減らす
・スマホに目を近づけ過ぎない
・電車やバスの中、暗い中での使用は目の負担になるので控えめに
・30分使ったら5分休む
・目を休めるときは、遠くを見るように意識する
・入浴中に目の周りをマッサージする。
・アイマスクや蒸しタオルで目を温める
・睡眠を十分にとって、目の疲れを癒す
・バランスの良い食事を摂る
・ビタミンが豊富な野菜は新鮮なものをたっぷり摂る
20~30代でスマホ老眼になると、加齢とともに症状が重くなってしまうこともあります。
また、中高年以降の人は、スマホなどの使い過ぎで老眼を悪化させてしまう可能性もあります。
日常生活でスマホを良く利用している方は、体の中からしっかりケアして目を健やかに保つように心がけましょう。
【この記事を書いた人】
創業明治34年 漢方薬の西山薬局
四代目 薬剤師 西條ゆみこ
漢方薬局に生まれ幼少期から生薬に囲まれて過ごす
大学生と中学生2児の母親
更年期障害真っ只中で漢方処方を日々研究中