めまいの症状は、多くの人が経験する身近な不調・・・
病気ではないからと軽視しがちですが、繰り返すめまいはとても不快で、日常生活に支障が出てしまうこともあります。
中には病気が隠れているケースもあるので症状がつらい人は積極的に対処しましょう。
めまいは3タイプ
めまいは、大きく分けて「ぐるぐる」「ふわふわ」「クラっ」の3つのタイプに分けられます。
自分は動いていないのに、周りの景色が揺れ動いたり、目の前がぐるぐる回ったり、 体がフワフワと動いているように感じたりします。こうした異常な感覚を「めまい」と言います。
めまいは、耳の三半規管や脳など、身体の平衡をコントロールする器官に不調が起こることが主な原因です。そのタイプは大きく3つに分かれていて
・「ぐるぐる」回るめまいは耳の不調
・「フワフワ」するものは脳の不調
・「クラっ」とするめまいは加齢や貧血
が原因で起こることが多いとされています。
漢方の中医学では、こうしためまいの特徴と身体に現れるさまざまな症状を合わせて考えて、その根本となる原因を見極め対処します。
めまいを引き起こす主な原因は、体内の溜まる「痰湿(たんしつ)=余分な水分や汚れ」、ストレスによる「肝の不調」、血のめぐりが滞る「瘀血(おけつ)」、加齢や病気の消耗による「虚弱体質」などです。
こうした不調を改善することで、めまいを繰り返さない健やかな身体に整えていきます。
めまいの原因はさまざまですが、中には脳血管疾患や高血圧などの病気が隠れていることもあるので注意が必要です。
めまいを繰り返している人は、まず医師の診断を受けることが大切です。そのうえで中医学の養生を生かして、体質を根本から改善していくよう心がけましょう。
「ぐるぐる」のめまい 水分代謝が悪い痰湿タイプ
ぐるぐると回るような回転性のめまいは、内耳にある三半規管の障害から起こることが多いタイプです。
三半規管の内部はリンパ液で満たされているため、中医学では体内に「痰湿(余分な水分や汚れ)」が溜まると、その状態に影響が出てめまいが起こると考えます。
暴飲暴食、油っこい食事や冷たい飲食物・アルコールの摂りすぎといった不摂生を続けていると「脾胃(消化器系)」の働きが落ちて水分代謝が悪くなり、痰湿を生む原因となるので気をつけましょう。
食生活を見直して胃腸の調子を整えながら、痰湿をスッキリ取り除くよう心がけましょう。
【症状】
ぐるぐると回るようなめまい、吐き気、耳の閉塞感、痰が多い、胸の不快感、食欲不振、軟便、肥満気味、舌の苔がべたつくなど
【食養生】
利水作用のある食材を積極的にとる
冬瓜、ハト麦、くらげ、きゅうり、はるさめ、大根、梨、もやし、ビワなど
【よく用いられる漢方薬】
温胆湯、二陳湯、半夏白朮天麻湯、半夏厚朴湯など
「フワフワ」のめまい 長引く不調の瘀血タイプ
慢性的な高血圧や脳疾患、長期にわたるストレスなどを抱えていると「瘀血(血行障害)」を招きやすくなります。
血行が悪くなると脳にも十分な「血」が巡らなくなるため、めまいを起こしやすくなるのです。
このタイプは、めまいを繰り返していることも多いので、不快な症状を和らげるためにも積極的に対応しましょう。
日ごろの食生活に気を付けて、血流をスムーズに保つように心がけましょう。また、身体を冷やさない生活を心がけることも大切です。
【症状】
めまいを繰り返す、頭痛、胸痛、顔色が暗い、手足のしびれ、舌の色が暗いなど
【食養生】
血の流れをスムーズにする食材
玉ねぎ、らっきょう、ひじき、いわし、サバ、小豆など
【よく用いられる漢方薬】
冠元顆粒、血府逐瘀湯、桂枝茯苓丸、田七人参など
「クラっ」とするめまい 高齢者に多い虚弱タイプ
クラっとする立ちくらみのようなめまいは、高齢者や虚弱体質や貧血などの人に多く見られます。
このタイプは、体内の「気」「血」が不足気味で、エネルギーや栄養、潤いが全身に行き渡りません。
その結果、脳や耳の栄養不足、全身の虚弱などを招きめまいを起こしてしまうのです。
気になる症状のある人は、「精(生命エネルギー)」を蓄える「腎」、気を生む源となる「脾胃」、全身に栄養を与える「血」をしっかりと養うように心がけましょう。
特に腎は加齢とともに自然と衰えるため、めまいが治まっても積極的にケアを続けていくことが大事です。
【症状】
立ちくらみ、慢性的なめまい、冷え性、物忘れ、耳鳴り、腰痛、夜間頻尿、息切れ、疲労感、食欲不振、動悸、生理不順、更年期症状、睡眠トラブルなど
【食養生】
血を養い、腎・脾胃の働きを良くする食材
枸杞の実、黒豆、くるみ、黒ゴマ、黒砂糖、なつめ、山芋、納豆、大豆製品、人参、ほうれん草、レバー、鮭、さばなど
【よく用いられる漢方薬】
杞菊地黄丸、八味地黄丸、補中益気湯、六君子湯、婦宝当帰膠、心脾顆粒、天王補心丹など
ストレスが原因 肝の不調タイプ
五臓の「肝」には、全身の「気」「血」の流れをコントロールする、ストレスを発散させる、自律神経を調節するといった働きがあります。
ところが、過度なストレスや睡眠不足、過労などが続くと、こうした肝の機能が低下してしまいます。
その結果、気・血の流れが停滞して血圧の変動や自律神経の乱れなどを招いてめまいを起こしてしまうのです。
このタイプは、イライラやストレスなどで体内に熱がこもりがち・・・。
まずは体の余分な熱を冷まして、肝の働きを健やかに保つように心がけましょう。また、日ごろから気持ちを穏やかに保つよう意識して過ごすことも大切です。
【症状】
フワフワするめまい、ふらつき、耳鳴り、のぼせ、ほてり、熱感、イライラ、怒りっぽい、口の渇き、口の苦み、便秘気味など
【食養生】
涼性の食材で夏を冷まして、酸味で肝を補う食材
菊花、緑茶、セロリ、酢、トマト、レモン、そばなど
【よく用いられる漢方薬】
加味逍遙散、逍遥顆粒、瀉火利湿顆粒、竜胆瀉肝湯、釣藤散、牛黄など
めまいを改善する暮らしの養生
・ウォーキング、ラジオ体操、ヨガなどの有酸素運動を習慣にする
・日常の楽しみを見つけて、上手にストレスを発散する
・食事は薄味(減塩)を意識して、酸味を上手に使う
・アルコールの摂り過ぎに気を付ける
・睡眠はたっぷりとって、心身の疲労を回復する
・バランスの良い食事に気を付けて、排便をスムーズにする
・冷たい飲み物・食べ物は控えめにする
・必要以上に水分を摂り過ぎない
・身体は冷やさないよう心がける
まずは、自分のタイプを知り養生を心がけてみて下さい。
症状や体質は一人ひとりことなりますので、漢方薬をご希望の場合は西山薬局にご相談ください。
【この記事を書いた人】
創業明治34年 漢方薬の西山薬局
四代目 薬剤師 西條ゆみこ
漢方薬局に生まれ幼少期から生薬に囲まれて過ごす
大学生と中学生2児の母親
更年期障害真っ只中で漢方処方を日々研究中